民意の罠~王様をほしがったカエル~
- 二大政党制
- クリーンな政治(清廉潔白)
- 政治主導(=公務員批判)
- 決められる政治
- 責任ある政治
- 構造改革
- 教育改革
これにどれか一つでも当てはまれば、あなたが今回も戦犯です。
「白河の清き川」を求めた90年代
事は二大政党制やクリーンな政治は90年代から始まった政治改革に始まる。
いわゆるリクルート事件*1で、政治と金が問題になった。そこで政治資金規正法とそのために失うお金を補填する政党助成金が出来た。
白河の 清きに魚も 棲みかねて もとの濁りの 田沼恋しき
中選挙区の金権政治
中選挙区の凄い話が載っている。上州戦争(中曽根と福田)はよく聞く。
ちなみに買収は中選挙区で起きやすく、理由は党内の争い(同士討ち)が原因です。だから政治学者は中選挙区制に懐疑的だそうです。
ツイッターにあったもの
党内競争(同士討ち)があると、汚職が増えるという理論(e.g., Chang and Golden 2007)通りの帰結。多くの政治学者が中選挙区制を否定的に評価する一因。他にも過度の利益誘導や政党規律の弱さなど。
与党候補ないに差がないと利権誘導と接待で差を作る。(強調引用者付記)
有権者や、地方議員からすると、同じ自民党の候補者なので、3人に基本的に政策に違いがありません。3人の候補者は政策的な差別化が図れないので、「あの道路は俺が作った」みたいな、どれだけ予算を地元に持ってきたか(利益誘導政治)がアピールポイントになります。さらにその先が、直接的なカネ配りだったり、選挙事務所での食事だったりするわけです。とにかく政策では差がないので、政策以外の差が得票になるのです。
どんな国会議員でも地方組織に配慮しないと選挙で勝てない。例の金配りはそこを怠っただろうという推測だった。ちなみに地方組織の細かい話がこちらになる。
伊丹十三が生きていたら選挙を映画にしたと思う。マルサの女2で国会議員の懐事情を少し描いていた。あと少なすぎる担当行政職員の話も。
昭和の金権政治と言えば田中角栄。その前に造船疑獄などがあるけど。
選挙の漫画
金と人事で縛る
まず、前者(お金)により、派閥が無くなった。派閥のボスがお金を集められなくなったからだ。
(参考になる話)
派閥の親分が無理してカネを集める→系列の国会議員に配る→地元でカネが飛び交うのが中選挙区制の行きつく先だったのです。
後者(人事)はお金は党首(幹事長)が配ることによって、議員がサラリーマン化した。社長の意向が強く反映できる仕組みになった。違反者は公認を与えず刺客を送り込まれる。つまり党内人事権も握った。実際に刺客を送ったのは小泉首相時代。(無理に)通そうとしたのは郵政民営化法案。この手法は今でも生きている。安倍首相はその手法の正統な後継者である。
事実上派閥がないと抵抗勢力になる党内野党や派閥が育てる人材がいなくなる。かつては竹下派七奉行は有名で、後の総理2人や要職を占める人材がいた。この党内の人材不足が今後表面化する恐れがある。
党内圧力がなくなったため結果的に独裁というポジションができあがった。王国において国内貴族が小物化して結果的に絶対王政になってしまった国と同じである。
選挙に勝てる顔
先の政治改革で金と人事を党首(幹事長)が握ることになった。あとは党首を誰にするかである。国民的に人気が高い人を必然と選ぶようになった。選挙に強い顔が必要だからである。選挙は小選挙区制である。小選挙区制は二大政党制を促進するために作った。始めたのが小沢一郎である(正確に言うと違うが政治改革の原動力となった人の内の1人*2)。
学者の分析
要するに安倍さんが選挙が強いってことです。
非自民・小沢一郎氏が導入した小選挙区制の弊害と共産党の悲劇 | MEDIA KOKUSYO
導入を決めた河野氏、細川氏は\"後悔\"〜小選挙区制で政治は良くなったのか?総選挙プレイバック(2) | ABEMA TIMES
決められる政治としての小選挙区制
小選挙区ではどんなことをしてでも勝てなければならない。政党の視点だと二大政党制としてどちらかの政党に一本化しなければならない。選挙区はオセロの様に白か黒しか色がない。政党(政治家)は白か黒かを選ばなければならない。それが一本化である。一本化できたのが自民党と公明党で、半分出来たのが民主党である。だから民主党は政権が取れた。それ以外の政党は出来なかった。野党側である黒が多色になっていた。その一つである社会党は押しつぶされた。かつて野党最大の議席を持った社会党は為す術も無く消えていった。
野党はまとまれない
野党がまとまれない理由が九条という分析。自民党政権として九条は変えない方がメリットがある。だから改憲論を出しつつ野党の分断を図る。
野党支持者の中にもその分断は存在し、左派野党支持者からすると、9条改憲(加憲)に与する中道野党は「自民党と同じ」と見えるし、中道野党支持者からすると、日米安保体制の堅持などは最低限絶対譲れないため、日米同盟を傷つけかねない左派政党に政権を委ねることは論外になる。
結果どうなったかというと野党の総崩れ
二大政党制が機能して初めて効果を発揮する制度だった。民主党が政権を取ったときに一応その片鱗は見せた。実際は財務省主導と言われる行政の無駄の排除=行政の貧困化だった。
決める場所として経済財政諮問会議
あらゆる政策決定において自ら主催するとともに民間議員に提言権限を持たせた「経済財政諮問会議」をフル活用した。
故後藤田正晴氏が警告した“政治主導の落とし穴”にはまった民主党 | 辻広雅文 プリズム+one | ダイヤモンド・オンライン
政治家が人事権を握り公務員の自律性を奪う改革~忖度は人事権~
2013年の国家公務員法が改正され内閣人事局が新設。人事権を握った。
官僚人事、誰が決める:官邸主導で何が変わったか | nippon.com
菅氏、内閣人事局は変えず 「政策反対なら異動」 | 共同通信
コロナ迷走、強すぎた官邸 「私から言えない」官僚たち:朝日新聞デジタル
参考文献
『首相支配』はコンパクト。『平成デモクラシー史』は通史としての正確なので詳しいですが長い。順番としては首相支配で気に入ったら、平成デモクラシー史に読み進めるのがいいです。
脱官僚の始まり
その他
勤労統計、マイナス改定に「官邸怒り」 厚労省職員、有識者に発言|【西日本新聞】
元日銀マンが斬る 厚労省の統計不正、真の“闇” (1/6) - ITmedia ビジネスオンライン
毎月勤労統計の不正が開始された04年当時、小泉・竹中改革による派遣法改正で、製造業の派遣が解禁され、非正規社員の増加と合わせて、人材派遣会社の事業規模も拡大していた。雇用が不安定化する中、雇用保険の支払いを抑制したいという誘惑に、厚労省は駆られなかったのだろうか。
統計法の改正は小泉政権の時代から議論され、安倍政権の下で公布、麻生政権の下で施行されている。民主党時代にも毎月勤労統計の不正は続いていたが、統計法改正を機に政府統計の再建に道筋をつけるべき立場にあったのは、民主党政権ではない。自民党政権である。
そして、賃金の伸びが高く見えるような修正が18年に安倍政権の下で行われた。
DL違法化、差し戻しでも修正せず 甘利氏「政治論だ」:朝日新聞デジタル
「桜を見る会」名簿 シュレッダー廃棄は共産党議員が資料要求した直後 - 毎日新聞
日本の議院内閣制と安倍内閣の行方:ウェストミンスター化を阻む「壁」 | nippon.com
「安倍政権7年で霞が関はガタガタになった」片山元総務相:日経ビジネス電子版

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