プラットフォームビジネスの非人間性 大塚英志が指摘した工学化による効率化

「高い意識と低い倫理観」は言い得て妙だと思った。

 

 

(追記)

売るためのスキームというのがまさに売るために特化した工学的手法。変数を見つけてそこを操作して出力を最大化する。

中身があればいいけど、外側が完璧で中身がスカスカなものができてしまう。売りが中身から外見に変化する。「天ぷら」という比喩が昔からあるので、新しいことではないのかもしれない。

「売るための努力」から「中身はどうでもいいものを売る」ための方法に変化した。つまり、手段が目的化している。

中身はいつの時代も同じだから、パッケージを変えるだけが必要ともいえる。

 

工学化が人間性を破壊していく~新・疎外論

ところどころ追記しているので一覧性はありません。

大塚英志が指摘した工学化=非人間性

第1回:西部邁の死と「工学化」する保守 - 平成30年論 | ジセダイ

西部のいう、世界の「形式化と数量化」が、ぼくのいう「工学化」である。

角川書店の話。映画で本を売るというフォーマットを作った。横溝正史シリーズが売れた。

ぼくは『日本がバカだから戦争に負けた』で、角川書店を例に、この国で人文的知が工学的知に凌駕されていく様と、両者の断絶を論じた。本はさっぱり売れなかったが、Amazonの読者の書評を見る限り、「工学系・情報系ムカつく」という人が少数だがいることはわかる。本では、一応は「工学知」と「人文知」の対話が重要だと書いたが、ぼくの中にも「工学化」への違和は、「感情」の水準で少なからずある。

(強調引用者付記)

その本がこちら

プラットーフォームビジネスの「構造的欠陥」

書評*1が面白くうなずくしか無かった。

書評を借りるならプラットフォーム(ここではKADOKAWA)は人工的な製造装置であって、そこに人間性=作家性は要らない。いわゆる二次創作(本来はおかしな用語)も同じで、外観(設定)を借りただけで(本来の作者の)作家性がない。それが効率的に生み出される同人誌の群れである。「外観(設定)を整えれば、いくらでも物語が作り出せる」という大塚英志がかつて示した物語論である。さらに進めると東浩紀のデータベース消費になるのかもしれない。

 

大塚英志作家性はどこまでかという境界線を探したのだと思う。お話の構造自体は作家性はないということを物語論で示した。いわゆるハリウッド形式の脚本はほとんど物語論で書けてしまう*2スターウォーズが神話論*3をベースにしているのは有名である。

物語の工学化という実績があったからこそ物(人も含めた)の工学化=人間の疎外という現象に自覚的であった。世の中の工学化に反対したのが江藤淳なり西部邁だったりした、かつての保守なのだ(それは今や左翼が担っている)。彼らが反対したのは近代、即ちアメリカ化だった。これは後にグローバル化になる。

金上鋭の初登場巻

美味しんぼ (50) (ビッグコミックス)

美味しんぼ (50) (ビッグコミックス)

 

 

効率化の権化IT企業等の新興勢力

これに(無自覚に)順応的なのが最近のIT企業である。勝間和代が切れた*4理由はそこ(工学化)に直面したからだと思う。工学化は人間性(敬意)を表さないから。

結果どういうことが起きるのかというと

粗雑な「工学的知」は、効率のいい金儲けをしたがる人間を招き寄せやすいというのは、わかりやすいところでしょう。

KADOKAWA的なプラットホームシステムと『けものフレンズ』

強調引用者付記

グローバル化と付随する非人間性=疎外の問題はこれからも続いていくと思う。あとは高級化と安物化の二極化になったとき安物がどうなるかですね。

安売りすると質が下がることは見えています。安物は以前、漫画家佐藤秀峰がマンガの原稿料で原稿がどう簡素化していくかということをやっていた。安物は背景がほとんど消えていた記憶がある。

出版不況で、できるのは。

金をかけなくとも売れる仕組み

印税率2%?

幻冬舎社長の見城徹が、日本国紀のパクリを批判した作者の実売部数を公表し作家などから顰蹙を買う - Togetter

wiki(無料百科事典)からのパクリ疑惑

「日本国紀」にWikipediaや過去の新聞からのコピペ疑惑。ネットでタダで読めるのに2000円払う意味あるの? - Togetter

やしきたかじん『殉愛』、業界評は「取材不足」も……幻冬舎は「バカ売れ」とお祭りムード(2014/11/20 19:00)|サイゾーウーマン

百田尚樹『殉愛』の真実

効率化同士の戦い

幻冬舎角川書店出身です*5

金儲けに最適化された出版社と同じく最適化されたネット企業の別れ話。

幻冬舎の創業者・見城徹さん、NewsPicks(ユーザベース)が身勝手だと激怒(株価は急落) : 市況かぶ全力2階建

効率的な金儲け同士のなので、一方が自社開発が出来るようになれば内製化するってことなんだろうね。ノウハウが欲しかった。最短は出版社買収だけど、社長の個性が強い会社は買えないかった。

幻冬舎カリスマ社長がNewsPicksに大激怒。その真相は?(THE PAGE) - Yahoo!ニュース

角川の系譜、幻冬舎

看板作家は百田(ひゃくた)氏なんだから、儲かるところを優先するということかな。他の出版社はどうなんだろう。

百田尚樹さんの「日本国紀」批判で出版中止 作家が幻冬舎を批判 - 毎日新聞

売るための効率化と捨てられる人間性。たぶん未来はこっちだけどあまりいい世界ではなさそう。モダンタイムズは未だ健在。

幻冬舎社長の見城徹が、日本国紀のパクリを批判した作者の実売部数を公表し作家などから顰蹙を買う - Togetter

幻冬舎・見城社長が出版中止作家の「部数さらし」のち謝罪 同業者から集中砲火「完全に一線越えてる」 - 毎日新聞

こちらは受けなかった様です。

ナメクジだらけのHPよりもスゴい中身…少年Aが『絶歌』出版から逃げ出した幻冬舎・見城徹社長の裏切りを告発!|LITERA/リテラ

中身はともかく売れるものを探して、さらに売る能力は高い。

【独占】見城徹「やましいことは一切ない」──『日本国紀』への批判に初言及 | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

かつて、角川が映画を作って本を売ったが、それ以上の売り上げ主義的なにおいを感じる。角川は文化を担うという矜持(きょうじ)があったように思える。

犬神家の一族 角川映画 THE BEST [Blu-ray]

効率よく稼ぐ。その業界への愛はない。

まとめると、そういうことですね。ただし古い人(50歳以上)ほど、まだ業界に対する愛みたいなにおいがありますが、その下の世代はほとんどない。40代が一つの分水嶺で30代(80年代生まれ)はないです。

秋元康もこの系譜な気がするけど、悪意や薄さは感じないのが不思議です。糸井重里も悪意や毒がない。たぶん世代的なものだと思った次第。

毒はあるが愛があるラーメン発見伝の芹沢は一度挫折してからの方法論なので癖があるけど意味はわかる。

 

ラーメン発見伝(1) (ビッグコミックス)

ラーメン発見伝(1) (ビッグコミックス)

 

 

ラーメン愛のない芹沢というジャンル

効率的にバブルを作って売れてる感を出す方法論。

メンバーたちは、書籍が発売される前に予め本をもらい、読み込み(あるいは読まないでいる方もいるかもしれない)、そしてAmazonに一気に星5個のレビューを書きまくる。TwitterなどのSNSでも盛大に感想を発信し、あたかも「大波が来ている」かのような演出に貢献する。

 

www.amazon.co.jp

はてなブックマーク - 「箕輪本」という不毛の荒野

書店も利益を最大化したいもの。初速が良く「売れている」本は目立つように置き、堂々と展開する。
そして幻冬舎お得意、特大新聞広告などの宣伝と一気呵成の大増刷である。数万部を世に送り出して、「大ヒット!!」という流れをつくっていってしまう。このあたりの既成事実の作り方というか、本の勢いの出し方と売り伸ばす力は幻冬舎という版元が誇る最強の武器であり、出版不況の中で確実に結果を出しているのだから凄いとは思う。

かくして、クオリティとは無関係に、書籍のイメージと評判は肥大化し続ける。
そして、「どうやらこの本、人気らしいぞ」という噂に釣られた方々までもが買い求め、そして多くは失望していくわけである。

web.archive.org

NewsPicksの識者同士で「この本は素晴らしい」「この著者は凄い」とお互いに胴上げして成層圏を突破する一方、無邪気にそういう人たちの推奨を信じる一般の人たちのイケスに向けて書籍をぶん投げて1万、2万と売る。さらには、そういうイケスにいる人たちを動員して、まだ出てもいない本を「Amazonランキング1位にしよう」とTwitterでセールスを仕掛ける。

https://bunshun.jp/articles/-/38253?page=3

かつて紀伊國屋で大量買いをやってランキングを上げ、それを見た地方書店が参考に仕入れるやり方があったらしい。そのもっと効率的にやる方法。

はてなブックマーク - 「箕輪本」という不毛の荒野

 

DMMもその系譜で儲かる商材を扱っているだけでたまたまそれが同人だっただけ。

実数と影響度のバランス

売れた数より影響を与えた方が大きかったと指摘したのは、吉田豪です。オンラインサロンビジネスを始めたのは岡田斗司夫で系譜が今の状況ですね。

 

評価経済社会 ぼくらは世界の変わり目に立ち会っている

評価経済社会 ぼくらは世界の変わり目に立ち会っている

 

実は90年代に出した本で、その改訂版?新版?です。

端的に言えば「影響力」の戦いです。それを洗脳(=洗脳力)と言っていました。

 

ぼくたちの洗脳社会 (朝日文庫)

ぼくたちの洗脳社会 (朝日文庫)

 

 

おまけ:教祖ビジネス

昔は1000人いれば食えたと言われた教祖ビジネス

完全教祖マニュアル (ちくま新書)

完全教祖マニュアル (ちくま新書)

 

 

 

アマゾンも本は好きではない(詳しくない)。売り物として本を選んだのだと思う。某通販サイトも服には興味がない。

次はあなたの業界を効率化の名の下に食い荒らす。

the four GAFA 四騎士が創り変えた世界

the four GAFA 四騎士が創り変えた世界

 
CODE―インターネットの合法・違法・プライバシー

CODE―インターネットの合法・違法・プライバシー

 

 ベストセラーより、ロングセラー。30数年で100万部しか売れていない本ですが名著です。内容は改訂版が必要かなあという位の古さはあります。

理科系の作文技術 (中公新書 (624))

理科系の作文技術 (中公新書 (624))

 

 

博士が生放送中に番組を降板した「真」の理由 『水道橋博士×町山智浩 がメッタ斬りトーク』(3) | TABLO

Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2019年6/4号 特集:百田尚樹現象 / 独占インタビュー 百田尚樹・見城徹(幻冬舎社長)